電力株主総会 原発頼みの経営脱却を

原発再稼働の見通しが立たない中、東京電力など電力各社が開いた株主総会は、八方ふさがりの経営状態を浮き彫りにした。立て直しに必要なのは「原発頼みの経営」から踏み出す決断ではないか。
 二〇一一年三月の福島第一原発事故から三年の株主総会は、九社のうち五社が三期連続赤字という決算を受けて開かれた。原発停止の長期化や火力発電の原燃料費の負担が重く、中部電力の三田敏雄会長が「配当ゼロ」をわびるなど各社は終始、経営悪化の弁明に追われた。一方、株主からの脱原発提案は、過去に一度もなかった北陸電力を含め全社に出された。いずれも否決されたが、総会は長時間に及んだ。
 経営陣が総会で示した立て直し策の柱は原発の再稼働で、「原発は重要な電源。さらに高いレベルで安全を確保し、地域の理解を得ながら再稼働に向けた取り組みを進める」(東北電力)など各社から強い意欲が示された。政府のエネルギー基本計画が原発を「重要なベースロード電源」と位置付けたことを受けたものだ。
 しかし、再稼働をめぐる現実は一段と厳しくなっている。そのひとつが、「脱原発」の自治体への広がりだ。
 関西電力には筆頭株主である大阪市が脱原発を迫った。京都市も脱原発議案を提出、これに神戸市が賛成した。現職や元市町村長らが二年前に設立した「脱原発をめざす首長会議」は会員が六十九人から九十八人に増えている。政府と電力各社は、原子力規制委員会の審査終了をもって地元との協議に入るとみられる。しかし福井地裁による大飯原発の再稼働差し止め判決もあり、協議の難航は避けられないだろう。
 電気料金の再値上げは窮余の策だが、消費税率10%への引き上げを控える政府が簡単に認めるとは考えられない。コスト削減の余地も狭まっている。
 国会で電力システムの改革法が成立し、地域独占にあぐらをかいてきた電力各社は今、自由化の入り口に立っている。関電の総会で橋下徹大阪市長は「経営陣は失格だ。自由化に耐えられる会社ではない」と経営の刷新を求めた。東京電力の舵(かじ)取りを任された数土文夫会長も「従来の経営手法を大胆に転換する」と強調している。見通しの立たない原発頼みの経営を脱却し、電力改革に正面から取り組むことで、消費者である家庭や企業の期待に応えるべきだろう。

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2014062802000104.html

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